インクライン2026.11月号 「伴走者としての真価を問う」を掲載しました。
開始日:2026-11-01
「伴走者としての真価を問う」
~信頼の架け橋となり、中小企業の未来を切り拓く~
中小企業支援委員長 西村 純史
私たちを取り巻く経済環境は、いま大きな転換期を迎えています。長引く物価高騰、深刻な人手不足、ゼロゼロ融資の返済本格化に伴う資金繰り管理など、中小企業を取り巻く環境は一層厳しさを増しています。
このような困難な時代だからこそ、私たちTKC会計人が「職業会計人」として、いかに中小企業経営者に寄り添い、その存続と発展を支えていくのか。その真価が問われています。
◆金融機関との「顔の見える関係」
中小企業支援において、金融機関との連携は欠かすことのできない重要な要素です。従来の「数字だけの付き合い」から一歩進み、経営実態を深く共有し、ともに企業の成長を支える「顔の見える関係」を構築することが、いま求められています。
この「顔の見える関係」をより強固なものとするため、これまで地域金融機関との対話の場を積極的に設けてまいりました。その大きな成果の一つが、令和8年10月19日に京都、同月21日に滋賀の各会場で開催された「金融機関交流会」です。両会場には、地域の多くの金融機関の皆様にご出席いただき、熱気あふれる盛大な会となりました。
この交流会を通じて改めて実感したのは、金融機関が私たちTKC会員に寄せる期待の大きさ、そして「情報の非対称性」を解消することの重要性です。企業と金融機関の間に、財務状況や経営実態に関する情報格差、すなわち情報の非対称性が存在すると、円滑な融資や適切な支援を妨げる要因となります。
この課題を打破する有力な手段が、「TKCモニタリング情報サービス(MIS)」です。
MISを通じて、月次巡回監査により信頼性が担保された決算書や試算表等のデータを、改ざんが困難な形で迅速に金融機関へ提供できます。これにより、金融機関は企業の財務状況や経営実態をタイムリーかつ正確に把握できるようになります。MISの活用は、それぞれに次のような価値をもたらします。
○関与先企業にとっては、迅速な資金調達と確かな伴走支援
○金融機関にとっては、精度の高いリスク管理と良好な融資先の確保
○TKC会員にとっては、社会的信頼の向上と、より高度な経営支援の実現
MISを基盤とした「顔の見える関係」こそ、私たちが地域に広げていくべき、これからの中小企業支援の姿であると考えます。
◆信用保証協会・日本政策金融公庫との連携
さらに特筆すべきは、今回の交流会や日頃の活動を通じて、信用保証協会ならびに日本政策金融公庫の皆様から、TKC近畿京滋会に対し、非常に強い連携への期待が寄せられていることです。
信用保証協会からは、特に「モニタリング強化型保証制度」の活用において、TKC方式の月次巡回監査に大きな期待が寄せられています。経営計画の策定と、その後の継続的なモニタリングが求められる本制度において、月次巡回監査を実践する私たちの存在は不可欠です。
また、日本政策金融公庫との間では、「TKCファストリンク」を通じた連携が加速しています。MISを基盤とした迅速な融資審査の仕組みは、資金需要を抱える中小企業に対し、「スピード」という大きな付加価値を提供します。
「TKC会員が関与し、経営計画を策定している企業であれば、より深く、より迅速な支援を展開したい」各機関から寄せられるこうした力強い言葉は、まさに「TKCブランド」に対する社会的信頼の表れといえます。
◆継続MAS による黒字化支援
金融機関等との信頼の基盤を整えたうえで、私たちが取り組むべきは、関与先企業の「稼ぐ力」を最大化すること、すなわち黒字化支援です。そのための強力な手段が、「継続MAS」による経営計画の策定とそれに基づくPDCAサイクルの実践です。
TKC方式による月次巡回監査を基盤とした継続MASは、単なる予算管理にとどまりません。毎月の面談を通じて、計画と実績の乖離を早期に発見し、必要に応じて速やかな修正行動を促します。さらに、経営者が抱える現在の悩みや課題を共有し、その解決策をともに考える「壁打ち相手」となることも重要です。
この伴走支援こそが、関与先企業を黒字化へ導き、激動の時代を生き抜く強靭な経営体質を築くための実践的な経営助言となります。
◆AI 時代に輝く「アナログ力」と、 真に信頼されるパートナーへ
現在、生成AIをはじめとするテクノロジーは、目覚ましい速度で発展しています。仕訳の自動化や財務データの瞬時の分析など、これまで私たちが多くの時間を費やしてきた業務の一部は、近い将来、AIによって代替・効率化されていくことでしょう。
しかし、テクノロジーがどれほど進化しても、決して代替できない領域があります。それは、経営者の心の機微に触れ、その孤独や迷い、重要な決断に寄り添う「アナログ力」です。そして、それこそが私たちTKC会計人が築いてきた、伴走支援の本質であると考えます。定型業務が効率化されるAI時代だからこそ、私たち職業会計人が関与先企業と膝を突き合わせ、経営者とともに未来を語り合う「対話の価値」は、これまで以上に高まっていきます。
関与先企業から、「この先生がいてくれたから、我が社はここまで来ることができた」と心から信頼される、唯一無二のパートナーを目指してまいりましょう。