インクライン
2025-08-01

インクライン2025.8月号 FX シリーズを使いこなそう 電子帳簿保存法の対応 を掲載しました。

開始日:2025-08-01

FXシリーズを使いこなそう 電子帳簿保存法の対応
洛東支部長 木下 隆一

企業の経理業務において、紙ベースからデジタルへの移行は急速に進んでおり、特に電子帳簿保存法への対応が注目されています。電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類の電子保存を認める法律であり、特に2024年1月からは電子取引データの電子保存が義務化されるなど、企業にとって対応が急務となっております。
TKCの電子帳簿保存対応の中核となるのが、「FXシリーズ」などの会計ソフトと、証憑保存機能を組み合わせたソリューションです。これにより、仕訳帳や総勘定元帳の電子保存はもちろん、領収書や請求書などの紙の証憑書類もスキャナやスマートフォンを用いて電子化し、クラウド上で一元管理することが可能となります。
電子帳簿保存法における保存要件(訂正・削除の履歴、検索性、真実性・可視性の確保など)を満たすためには、システム面と運用面の両方で準備が必要です。FXシリーズでは、これらの要件を満たす仕様があらかじめ組み込まれており、導入企業は安心して運用を開始することができます。加えて、従来必要だった税務署への事前申請も不要となり、スムーズな導入が可能です。
制度の解釈や運用方法について、TKC会員事務所が関与先企業と伴走しながら導入・運用を支援する体制が整っており、特に関与先企業にとっては心強い存在となっております。また、導入時には初期指導やマニュアル整備の支援も行われ、ITに不慣れな関与先企業でもスムーズに制度対応が可能となっております。TKC会員事務所の実際業務に寄り添ったアドバイスとサポートを受けることで、確実かつ安心な移行が実現できます。

導入プロセスは大きく5つのステップで構成されます。

① 自社の現状把握。紙で管理している証憑の量、既存の会計ソフトの活用状況、業務フローの棚卸しなどを行います。
② 次に、TKCの「FXシリーズ」など電子帳簿保存法対応の会計ソフトを導入し、TKC会員事務所の支援を受けながら設定を進めます。
③ 証憑の電子保存方法を社内で検討・整備。たとえば、スマートフォンを使ったアップロード、スキャナでの一括保存、OCR機能による仕訳入力の省力化など、業務に合った運用手段を選定します。
④ 法令に基づいた保存要件を満たす設定を行い、運用ルール(ファイル名の付け方、保存期間、アクセス権限など)を社内で明文化します。
⑤ 運用開始後は、定期的な内部監査や改善サイクルを回すことで、長期的な法令順守と業務効率化を両立させていきます。

関与先企業がFXシリーズを導入したら、月次巡回監査を断行しましょう。月次巡回監査は、以下の4つの柱で構成されています。

① 記帳内容の確認と証憑チェック
領収書・請求書・通帳などの証憑と帳簿を照合し、正確な記帳が行われているかを確認。

② 月次決算の実施
月次試算表を作成し、損益・資金繰り・財務状況を「見える化」。巡回監査機能で仕訳と証憑の突合などの事前確認が可能です。

③ 経営助言と改善提案
業績推移や予算実績差異をもとに、経営課題を抽出し、改善策を提案。資金繰りや融資対応、価格設定などの相談にも応じます。

④ 税務リスクの早期発見
税務署からの指摘を未然に防ぐため、帳簿の適法性・網羅性・真正性を確認。電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も含まれます。

月次巡回監査は、単なる会計チェックではなく、「経営者の意思決定を支える“経営インフラ”」です。TKC会員事務所は、この仕組みを通じて、顧問先企業の黒字決算と適正申告を支援しています。変化の激しい時代だからこそ、「毎月の数字に向き合う」ことの価値が、ますます高まっています。
さらに、ペーパーレス化による保管スペースの削減や、経理業務の効率化、金融機関との連携強化にもつながる点から、中小企業を中心に導入が進んでいます。加えて、電子インボイス制度への移行と連携させることで、より一層の業務効率化も期待できます。

FXシリーズは、制度改正やユーザーの声を反映しながら、システムの改善を継続しています。
たとえば、検索機能の簡素化やスマホからの証憑保存機能の強化など、現場の使いやすさを重視したアップデートが随時行われています。また、AIによる証憑読み取り精度の向上や、仕訳学習機能の搭載など、業務の自動化・省力化にも積極的です。

電子帳簿保存法は、単なる保存方法の変更ではなく、関与先企業の業務プロセスや経営管理の在り方を見直す契機となります。TKC会員事務所は、その変化を「負担」ではなく「進化のチャンス」と捉え、制度対応と業務改善の両面から中小企業を支援していくことが求められています。今後も、制度改正や関与先企業・ユーザーの声を反映しながら、より実務に根ざしたシステムの改善と進化を続けていくことが期待されています。