インクライン2025.5月号「中小企業を支援する税理士で あるために今、できること」を掲載しました。
開始日:2025-05-01
中小企業を支援する税理士であるために今、できること
TKC近畿京滋会 財務委員長 宮地 和彦
はじめに
物価高、人材不足、中小企業をとりまく環境は非常に厳しい状態です。月次巡回監査中に様々な相談を受けます。昔はどのようにして利益を出していくかが大半でしたが、今は、どのようにすれば事業の継続ができるかが話題の中心となっています。日本経済を支えてきた中小企業がそのように疲弊している状態の中で、私たち税理士は率先して、DX化に取り組んでいく必要があります。
税理士のDX化
今、時代はDX化を求められています。
ITとDXの違いが分からない私は、DXを調べてみました。
「DX=デジタル(IT化)+トランスフォーメーション(変化)」
ただ、ITを導入するだけではなく、ITを導入することで改善された作業効率等を利用して、組織等を変化・成長させることがDXとのことです。昭和生まれでいまだにガラ携帯を持っている私にとっては、「IT?」「DX?」の世界ですが、TKCシステムを活用することで、業務効率の向上、クライアントとの関係強化、さらには税理士自身の付加価値の向上に寄与する重要な要素に繋げていけると確信しています。
クラウド会計の活用
クラウド会計は、今後の税理士業務における、DX化の中心的なツールだと思っています。従来の会計ソフトは、データの管理やバックアップ、システムの保守などが課題だといわれており、また、タイムリーな情報が確認できないこともデメリットと言われていました。それに対しクラウド会計は、インターネットを通じてリアルタイムでデータを更新・共有できるため、複数の担当者やクライアントとの協力が容易になります。これによって、税理士は顧客の財務状況を迅速に把握し、リアルタイムで適切なアドバイスを提供することができます。また、顧問先の経費の入力や支出の管理がリアルタイムで把握できることにより、事務所での事前監査が行えるので、スタッフの業務分担による勤務体制の改善や、月次巡回監査での効率化及びより充実した経営助言が行うことができ、高付加価値となる事務所経営を確立することができるようになります。
AI機能を駆使した証憑保存機能
AIは、私たち税理士の業務の効率化に大きく貢献しています。特に証憑保存機能は、AIを活用して、取引日、取引金額の他、インボイス番号をAIで自動認識して読取を行い、そのデータにて仕訳入力が行えます。これにより、手作業で行っていた業務から解放され、正確かつ迅速に帳簿を作成することができますし、電子帳簿保存法などの法令遵守にも適応が可能になるので、経営者は集中して経営を行うことができます。
TKCチャットの活用
顧問先とのやり取りを行うために、TKCチャットは大変有用です。今までは、個人のLINEにて連絡をしたり、資料の受け渡しを行ったりしていました。しかし、スタッフを採用することになり、これからの事務所運営を考えたときに私用のSNSツールを利用することは、情報漏洩になるリスクの他に、休日でも連絡がとれることによるスタッフの負担など様々な問題となる恐れがあります。TKCチャットでは、これらの問題が解決するとともに、所長自身も顧問先とのやりとりを確認することができるので、事務所全体で瞬時の対応が可能となり、より詳細な情報に基づいたアドバイスができるようになります。それにより顧問先との関係性がより深まり、事務所経営がより安定化すると考えられます。
電子納税の普及
税理士業務において、電子納税の推進もDX化の大きな柱の一つです。電子納税の推進により、従来の手書きの納付書を郵送する手間を省くことができ、顧問先はオンラインで電子納税を行えるようになりました。納税方法も多種多様でネットバンキングでの納付や納付日を指定できるダイレクト納付、また、ポイ活にも繋がるクレジットカードでの納税など、企業の状況に応じた納税方法が可能となりました。また、金融機関に出向く必要がなくなることから、作業の効率化や盗難・紛失防止にもつながります。税理士側においても、納付書の作成を行う必要がなくなることから、作業時間の短縮や事務処理に伴うミスの軽減につながります。
結論
電子申告が開始となった2004年、私は会計事務所に勤務しておりました。顧問先から電子申告についての相談がありましたが、その当時、紙で申告書の作成を行い、押印をもらって提出するのが当たり前でしたので、電子申告を始めるときは、不安や不満しかありませんでした。しかし、今では紙申告を行っていたことが信じられないぐらい当たり前に電子申告を行っています。そのような時代の変化に税理士は対応していき、そのノウハウを中小企業に伝えていくのが、今後求められる税理士像ではないかと思います。TKCからDX化についての様々なノウハウを提供していただきながら、今後の事務所経営を行っていければと思います。